チェスは素晴らしい世界語: 2009年6月アーカイブ

 

世界のチェス事情をいち早く配信している "CHESSBASE NEWS" で、本日私にとって嬉しい記事がアップされました。同サイトのコラムニストによる【For the beginners】という記事です。


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同サイトのようにチェスに関する世界中のあらゆる最新情報を配信しているところで、チェスの初心者に焦点を当てた記事はなかなかお目にかかれません。


この"For the beginners" 記事のなかでコラムニストはビギナーに向けていくつかアドバイスを発しているので紹介します。


先ずは
◆「ゆったり構えよう。」("Just relax.")

一夜にしてグランドマスターになれる人などいるわけがないが、インターネット上の掲示板などで「より優れたチェスプレーヤーになるための最速の道は?」あるいは「マスター/グランドマスターになるための最速の道は?」といった投稿を頻繁に目にする。そんなトントン拍子に事は運ばないものである。
あの最強の天才プレーヤーと謳われたBobby Fischerでさえ、ある一定の称号を得るまでに数年を要し、その後世界チャンピオンになるまで更に数年かかっている。
だから、こう考えてみてはどうだろうか。今日チェスに関して何か新しいことを学んだのなら、自分は昨日より優れたプレーヤーになったということであり、それを毎日繰り返していけば自分でも気付かないうちにごく自然に腕を上げていることになると。


◆ビギナーが初めに学ぶべきことは2つ。
①エンドゲーム(endgame)
②各ピースの相互作用、およびそれらピースが一つのシステムとしてどう機能するか。
(例:各ピースが影響を与えるマスの範囲、センターに駒を配置する重要性の意味など)

①について、よくビギナーは「でも、エンドゲームを学んだところで、実際の対局ではエンドゲームにたどり着く前に負けてしまう」 と口にするが、エンドゲームを学ぶことによってチェックのパターン(mating patterns)を習得できるようになる。言い換えれば、自分がチェックを指される状況を回避できたり、エンドゲームまで持ちこたえられるようになればそこから勝ちを収められるようになるということである。
②を正確に習得するには、盤上の駒数が少ないエンドゲームが最も適している。


◆ビギナーがチェスを学ぶには年代の古い対局が適している。〈古ければ古いほど好ましい)

その理由は、年代の古い対局は比較的単純明快でビギナーにとって理解しやすいから。チェスの知識や理解自体は、昔から今にかけてさほど進歩していないので、例えばPaul Morphy(ポール・モーフィ:1837-1884, 米国人)やAdolf Anderssen(アドルフ・アンデルセン:1818-1879, ドイツ人)の対局を学んでみることを勧める。現在の世界トッププレーヤーである Anand(現世界チャンピオン)やKramnikの対局に比べ、ずっと理解しやすく勉強になる。ビギナーがチェス(対局)の原則(Fundamentals)を学ぶという意味では、最新の定石を学ぶよりそうした1800年代に残された対局が一番役に立つ。

 

◆どんどん対局をしてみよう。そして、アドバイスを乞うことに躊躇しない。

実戦に勝る勉強はない。強い対戦相手から叩きのめされることもあるだろうが、対局後互いに考察する時間がある時は躊躇せずにアドバイスを乞おう。実戦から得られた教訓こそ、実力アップの鍵となる。

 

 このCHESSBASE NEWSの"For the beginners" コラムは今後しばらく続くようです。

Keep watching !


 

 

前回の記事に続き、松戸チェスクラブ主催チェスセミナー(5月31日 日曜 開催)をとりあげます。本記事では同セミナー第1部のGM Alexander Baburin氏によるセミナーが主な内容です。
(前回の記事にもあったとおり、私は茨城県笠間市から足を伸ばし参加しました) 

 

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(5月31日 松戸でのチェスセミナーの模様:左がGM Alexander Baburin氏、右が元全日本チャンピオン FM 渡辺氏。渡辺氏は通訳を担当。)

 

1)Alexander Baburin氏によるレクチャー

先ず、Alexander Baburin氏(以下、GM:グランドマスター)自身の過去の対局2ゲームが紹介され、対局においては戦術を立てて展開していくことの重要性が一貫して述べられました。

2対局紹介の後は、質疑応答やエンディング(対局の終盤)についてのレクチャー(いくつかのエンディング局面を提示し、セミナー参加者に次の打ち手を問いかける形式)で進行されました。


以下、GMレクチャーでのポイントを私なりにまとめてみました。


★「強いチェスプレーヤー」は2つに分けられる。

①強い展開でチェックメイトを狙っていくタイプ
②終盤にかけてテクニックを駆使し勝利を収めるタイプ

GMは自身のプレースタイルを後者に当てはまるとし、具体的にはAnatoly Karpov(アナトリー・カルポフ:ロシア人、第12代世界チャンピオン)のスタイルに近いと自らを評しています。

【参考:Anatoly Karpov 語録】(レクチャーとは無関係)*********************************************
「ゲームの進め方には2種類あるとしよう。ひとつは、美しい戦術的な一突きで変化をつけ、正確な読みを阻止するやり方。もうひとつは、陣形の変化で圧力をかけるやり方だ。私は躊躇なく後者を選ぶ。」
('Let us say that a game may be continued in two ways: one of them is a beautiful tactical blow that gives rise to variations that don't yield to precise calculations ; the other is clear positional pressure that leads to an endgame with microscopic chances of victory. I would choose the latter without thinking twice.')
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★エンドゲームの学習はチェス全体の理解につながる。

過去最も優れたチェスプレーヤーに一人として、Jose Capablanca(ホセ・カパブランカ:キューバ人、第3代世界チャンピオン)が挙げられる。カパブランカの本はエンドゲームから始まっていることからも、エンドゲームを学ぶことは非常に重要であることがわかる。若いプレーヤーは、とかくオープニング(対局の序盤)から学ぶ傾向にある(その方がエキサイティングだし面白みがある)が、エンドゲームの展開を習得することはチェス全体の理解につながるということを知ってほしい。(GMはこの点を強調していました)

【参考:Jose Capablanca語録】(レクチャーとは無関係)********************************************
「私は常に慎重にプレーし、余計なリスクを避けるよう心がける。私のやり方は、チェスの本質に反した不必要かつ"大胆な"いかなる方法よりも正しいと思う。チェスはギャンブルではなく、厳格な論理の規則に沿って行われる純粋に知的な戦いだ。」
('I always play carefully and try to avoid unnecessary risks. I consider my method to be right as any superfluous 'daring' runs counter to the essential character of chess, which is not a gamble but a purely intellectual combat conducted in accordance with the exact rules of logic.')
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またGMはMikhail Botvinnik(ミハイル・ボトヴィニク:ロシア人、第6代世界チャンピオン)の言葉も紹介し、エンドゲームの重要性を説いていました。その言葉とは、終盤での局面をいかに多く知るかが強いプレーヤーになる秘訣だということです。GMいわく、Mikhail Botvinnikはエンドゲームの局面を1万パターン程知っていたということです。


★戦術(プラン)の立て方

対局においては、1局を通して戦術(GMは"plan"という言葉を使用していました)を立てることなどあり得ず、局面によってその都度、別の戦術を論理的展開により練っていく。


この点については私の主観として、先述のエンディングの学習によっても培われる要素だと思いました。つまり、エンドゲームの展開を習得することはチェス全体の理解につながる、ということに関係しているということです。


★古典的(伝統的)チェスを学ぶことも大切

最近の若いプレーヤーはチェスがここ20年くらいの間に発展してきたと思っている者がいる。そうしたプレーヤーはとかくGarry Kasparov(ガルリ・カスパロフ:1985年に史上最年少の22歳で世界チャンピオンとなり、15年間にわたり世界チャンピオンのタイトルを保持した史上最強と謳われるロシアのチェスプレーヤー)の対局集ばかり学んでいることがあるが、それは間違いである。チェスの長い歴史に名を残してきた先人達のチェスを学ぶことも大切である。


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★チェス上達のためのお勧め方法

・本を読むのも大切だが、自分の対局や自分で実際に考えた打ち手を分析してみるのが一番身になる。

・ある局面(自分が選んだ過去の名局でも何でもよい)において自分が考える戦術(プラン)を紙に書き出していき、それを盤上で実際の対局内容と比較してみる。
(どんなにひどい戦術であったとしても、無いよりはずっとマシ)

・チェスの本を読む時、ボード上に駒を並べることはせずに、頭の中だけで理解するようにしてみるとよい。数手先まで読めるようにするための訓練となる。 

・毎日エンディングの問題をいくつか解いてみる。
(FM 渡辺氏の話:初めて全日本チャンピオンになった時、学生として修士課程に身を置いていたが、当時通いの電車の中で毎日2時間くらいエンディングの問題を解いていた。それが実力アップにつながったのは間違いない。)


以上がGM Alexander Baburin氏によるチェスレクチャーを私なりにかいつまんでまとめたものです。

 

【番外編】

レクチャーの最後に私からGMへ質問をしました。私はまだテクニック的なことはあまりわからないので、一般的なことを。ビギナーだからといって恥ずかしがらずに手を挙げました!


Q1:
現在、世界トップに挙げられるプレーヤーは?

A1:Match game(1対1の対局)であればViswanathan Anand(インド人、現世界チャンピオン)、Tournament game(複数のトッププレーヤー達による総当たり戦)であればVeselin Topalov(ブルガリア人、来年春に予定されている世界チャンピオンシップ戦で現チャンピオンのViswanathan Anandと対戦が決まっている)だろう。


Q2:現在の世界トッププレーヤーのなかで、ビギナーにとって良い見本となる(見習うべき点があるという意味も込めて)プレーヤーはいるか?
(これはある意味馬鹿げた、乱暴な質問だと思いましたが思い切って投げかけてみました)

A2:それは自分がどんなプレースタイルを好むのかによる。自分が攻撃的なプレーをしたいのであれば、例えばAlexei Shirov(先月開催された M-Tel Masters で優勝したばかり)を追ってみるのもいいし、サクリファイスを利用して優位な展開を得ようとするようなプレースタイルなら、例えばVladimir Kramnikが良い見本となるだろう。

 

ビギナーとはいえ、日々世界のチェス情報を追っている私にとっては "Chess Today"(Eメール配信型のデイリー チェス新聞)の編集長も務めるAlexander Baburin氏に直接質問できたのは幸運です。

ちなみに今回の来日を記念してか、Alexander Baburin氏の好意により、最近発行されたChess Todayが日本チェス協会のHPから無料閲覧可能となっています。同リンクページの最下部右端にある「LINK」コーナーからダウンロード可能です。先月末に作成されたもので、同氏が日本滞在中に感じたことなどが記事となっています。日本人プレーヤーの弱点にも触れられており、興味深い内容となっています。

 

次回は2)Alexander Baburin氏との同時対局 に触れたいと思います。

 

 

先週日曜日(5月31日)に千葉県松戸市で松戸チェスクラブ主催のチェスセミナーが開催されました。セミナー講師は、ロシア人GM(グランドマスター)のAlexander Baburin氏です。(本ブログの5月22日の記事でも紹介しました)



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私は茨城県の笠間市在住ですが、足を伸ばしてこのイベントに参加してきました。チェスプレーヤーとしてはビギナーの私ですが、何と!GMとの同時対局にまでエントリーしてしまいました。
チェスセミナーへの参加を考え始めた当初は、セミナーのみ参加(参加費無料)し、同時対局は見学するだけに留めておくつもりでした。その理由は、チェスと出会ってから1年そこそこ、しかもろくに対局をしたことのない私のような者がGMとの同時対局など失礼あるいは身の程知らずでは・・と思っていたからです。


ところが、
松戸チェスクラブ代表の方から以下のコメントをいただいたことから、その言葉に背中を押されるがの如く思い切って同時対局への参加を決意しました。
(松戸チェスクラブ代表の方、以下のとおり、いただいたコメントをそのまま掲載させていただきます。チェス グランドマスターの来日がどれだけ凄い出来事なのかということを、本ブログを見ている人にも紹介できる機会としてご理解願います)

 
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せっかくですから、一生の記念だと思って参加を考えられたらいかがですか。
日本国内では、GMの同時対局は5-10年に一度の大イベントなので、参加できる人はかなり幸運です。
相手はプロですから、初心者の相手は慣れています。
というよりも、むしろそれが仕事ですから、初心者だからといって臆することはありません。
初心者にとっては、GMと試合できるチャンスは他にありません。
GMの技を見せてもらって、潔く玉砕するのも一興です。
ひとりでも多くの方が同時対局という貴重な体験をされることを願っておりますので、是非参加をご検討ください。」
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いかがでしょうか。とても興味深いお言葉です。私のように、まだヘボな対局しかできない者でも「一生の記念」に値する機会を逃す手はないと思わせてくれる文面です。GMとの対局(=私にとって人生初のチェス対局:何という身の程知らず!!)を終えた今、思い切って参加して本当によかったと思っています。チェスの対局としては、みっともないさんざんな内容でしたが、GM Alexander Baburin氏のサインをもらった人生初の自分の棋譜は、私のこれからのチェスライフにおいて貴重な産物となるのは間違いなさそうです。
 

 
PIECES & CLOCK ON THE TABLE.jpg
 
私のGMとの同時対局については後日改めて紹介するかもしれません。公表するにはあまりにもひどい内容なので、現時点では本ブログで紹介するのをいまだ躊躇していますが、私の妻からは「人生初の対局がグランドマスターとの一戦なんて面白いじゃない!ありきたりの対局を載せるよりずっと楽しんでもらえるんじゃない?」と言われているところです。(それも一理ありか・・)
 


前置きが長くなりましたが、肝心のセミナー内容に話を戻します。


チェスセミナーは

1)Alexander Baburin氏によるレクチャー
2)Alexander Baburin氏との同時対局

で構成され、セミナー終了後は歓迎交流会も開かれました。同セミナーにはIM(インターナショナルマスター)であるSam Collins氏(アイルランド人)、および元全日本チャンピオンでFM(FIDEマスター)の渡辺氏が同行。これらGM、IM、FMの3名は友人の間柄です。渡辺氏はAlexander Baburin氏によるレクチャーでの通訳を担いました。(IMのSam Collins氏は聴講者の一人として参加)
(余談:私は自分が経営する会社の事業の一つに通訳があるので、渡辺氏がどんな通訳をしてくれるのか事前に気になっていましたが、さすが元全日本チャンピオンの実力者だけあって講師であるAlexander Baburin氏の発言を忠実かつわかりやすく訳していました。「言葉」に少々うるさい私でも満足できるレベルでした。)

 

次の記事では、1)Alexander Baburin氏によるレクチャー についてポイントをまとめたものを紹介します。乞うご期待!!!


 

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