昨日の記事で触れたBS1放送の「アジアンスマイル」を観ました。20分間と比較的短い時間枠でしたが私にとっては非常に面白い番組でしたので、以下紹介します。
主人公は、インドネシア ブカシ(首都ジャカルタから東へ20kmのところ)で父親が営む屋台のタバコ屋を手伝う15歳の少年、ファリ・フィルマンシャ君(以下、ファリ)。学校の教科書を一度読んだだけでそのページを覚えてしまうという才能の持ち主です。ファリ自身、「チェスは自分の友達・・・というより恋人かな」と話すほどのチェス好きです。1日6時間以上チェスの練習をし、トイレの中でも考えてしまうという程。
インドネシアはアジアでも有数のチェスが盛んな国で、競技人口は300万人以上といわれています。街を歩くと、所々でチェスをしている人たちが目に入り、皆思い思いにチェスを楽しんでいます。インドネシアは戦後オランダから独立します。それまで上流階級のものだったチェスは誰がも手軽に楽しめるゲームになったようです。
ファリは街角の小さな屋台で育ち、3年前まではその畳2畳程の狭いスペースで家族4人生活するという貧しい生活を送っていました。2007年の世界学生チェス選手権15歳の部で当時13歳にして優勝をさらいます。その後獲得したメダルは数知れず。その学生チェス選手権での優勝により、大統領からおよそ80万円の報奨金が支給され、そのお金で両親のために一戸建ての家を建てました。当然、一家の生活は大きく変わりました。(大会で得る賞金は、父親が営むタバコ屋の収入の1年分に相当します)今のファリにとってチェスは家族のためでもあります。
ファリにとってチェスは生まれた時からそばにあったもので、それは腕自慢の父親の影響でした。父親が毎日屋台で客とチェスを指していましたが、ファリは父親の膝の上でチェス盤を一日中飽きずに見入っていたといいます。ある日、父親が試しにファリにチェスをやらせてみたところ、いきなりできてしまったそうです。「教えていないのにスゴイと思った。」と父親。はじめは父親を相手にチェスを指していたファリですが、そのうち客とやるようになってどんどん上手くなっていったようです。ファリが9歳になった頃には、父親は滅多に勝てなくなっていたとのこと。
やがて、「タバコ屋の天才少年」の噂は瞬く間に広がり、屋台のそばにあるチェス学校(ウトゥト・アディアント チェス学校)にも伝わります。チェス学校の講師がいち早くその才能を見い出し、ファリを特待生として迎え入れるのです(講師のコメント:「チェスに対する集中力や情熱が他の子供とは違うと思った」)。そのチェスの専門学校では、生徒80人がプロを目指し定石や歴史を学んでいます。
放送では、その学校でファリが講師と対局するところや、今年ギリシャで開かれる世界学生チェス選手権に向けてファリが特訓をしている様子が映し出されました。講師との対局でファリは見事勝ちを収めます。講師が定石どおりに指すのに対して、ファリは「屋台流(誰も知らない)の戦法」で応戦したのです。学校に入るまでに特別な勉強をしてこなかったファリならではといえます。世界学生チェス選手権に向けての特訓では、2008年の世界学生チェス選手権11歳の部で優勝したインドネシア代表の女の子を相手に、ブラインドチェスの練習を行います。制限時間10分、ファリだけ実際の盤面を見ずに記憶だけを頼りにチェスを指します。(相手の女の子は盤面を見ています)その対局でも見事勝ちを収めます。ブラインドチェスは一部の上級者しかこなせませんが、ファリにとっては朝飯前のように感じられます。
ファリはウトゥト・アディアント チェス学校に入学以来、優秀は成績を収めてきていますが、それはインドネシアの国策が深く関わっています。チェス好きの国民性を反映して、2005年から政府の援助額が大幅に増えました。活躍が期待される選手には、大会の参加費や旅費が援助されるようになったのです。ファリが世界学生チェス選手権優勝で大統領から報奨金を支給されたのもその一環です。
・・・とここまでは、ファリの生い立ちや華やかな面などに触れました。もちろん、番組構成としてはそればかりではありませんが、本記事はここまでとします。(ちょっとここで一息・・)
次回の記事では、ファリの弱点についてや、ファリが憧れるインドネシア最強のプレーヤー(かつて世界チャンピオンと対戦した経験を持つグランドマスター)の自宅を訪れる場面などを紹介します。

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