2009年3月アーカイブ

 

論文では丸カッコのほか角カッコも使われます。引用文への挿入、丸カッコの中の文章にさらにカッコを使う場合、数学の公式の場合などです。翻訳の上でも丸カッコと角カッコの使い分けを知っておくことは大切です。それぞれのケースについて例文などを見てましょう。


引用文への挿入

引用されている資料の中に訂正や説明、あるいは批評を入れるために角カッコが使われます。

(英語の例文)

  • "Enough questions had arizen [these are not described] to warrant medical consultaion."
  • "The following year [2008] was a turning point."


丸カッコの中の文章にさらにカッコを使う場合

カッコの表現の中で、さらにカッコの表現を示すのに角カッコを使用します。他にも科学系の文章では、カッコ内にカッコと角カッコが続いて出てくる複雑なカッコ構造がたびたびでてきます。

(英語の例文)

  • A nitorogen mustard (mechlorethamine [Mustargen] hydrochloride) was one of the drugs used.
  • Her plattelet count was 100 X 109//L (100 000/mm3)(reference rang, 150 to 450 X 109/L [150 000 to 450 000/mm3]


数学の公式の場合
公式のカッコ使いはもちろん投稿する雑誌の指針に従う必要がありますが、カッコあるいは角カッコのどの表現も前カッコと後ろカッコあるいは角カッコ記号を確実に付けて、カッコと角カッコだけを用いることが多いように思えます。

(英語の例文)

  • The equation suggested by this phenomenon (t=d[r1-r2]) can be applied in a variety of circumstances.
  • An experimental drug (9-[2-hydroxy-1-(hydroxymethyl)ethoxymethyl)]guanine) was used to treat the cytomegalovirus retinopathy in patients with AIDS (雑誌名. 2007;104:1794-1800).

 

 

 

「論文翻訳のチェックポイント」コーナーの記事として、次は『アポストロフィ』を紹介します。

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アポストロフィ( ' )は英語論文を翻訳する上できちんと把握しておかなければならない用法の一つです。所有格、複数形、所有形容詞などでアポストロフィを用いる場合、どのような点を注意しなければならないかをご説明します。


所有格を表す場合
名詞および不定代名詞の所有格を表す場合はアポストロフィーを用います。

〈英語例文〉
一人の人を指す場合:Mark's bones
二人以上の人を指す場合: the Marks' bones

単数あるいは複数でもその語がsで終わらない英語の場合は、所有格にアポストロフィ+s('s)を付けます。
a child's wants, everyone's answer, men's concernsなど

固有名詞あるいは名前が発音されないs,z, xで終わる英語の場合は、アポストロフィ+s('s)を加えて所有格を作ります。
Marx's theories, Pres's workなど


所有代名詞
所有代名詞(his, hers, ours, its, yours, theirs, whose)にはアポストロフィ+s('s)は使いません。

  • The car is hers. 
  • Give the book its due.


複合語の所有格

複合語の最後の語の後ろにだけアポストロフィ+s('s)を用います。

  • mother-in-law's hat
  • physician-in-chief's decision
  • someone else's book
  • secretary of health's ruling 


組織名など所有を示す場合

名詞、組織、あるいは会社名などとともに所有を示す場合は、名詞あるいは名称の最後の語においてだけ所有格を用います。

  • Food and Drug Administration's policy

また、所有が個々のものであるとき、名詞はそれぞれ所有格をとります。

  • We matched the infant's and mother's records.

但し、名詞の一つが所有代名詞である場合、その他の名詞も所有格をとります。

  • I presented the intern's and my workup. 


複数形を作るためにアポストロフィを用いる場合の注意点

名詞の複数形を示す場合はアポストロフィは用いません。また、限定している語が所有格でなく形容詞あるいは限定詞として用いられている組織名にもアポストロフィは用いません。但し、公式名が基本です。

The Chicago Cubs, Veterans Affairs, musicians union, state parks rangersなど。

すべてが大文字からなる略語あるいは数字(年度を含む)の複数形を作る場合もアポストロフィーを用いません。

ECGs, EEGs, IQs, WBCs, RBCs, A woman in her 40s, During the late 1980sなど。


所有形容詞としての時間および通貨の単位

所有形容詞として用いられる時間(分、時、日、月、年など)の単位については、アポストロフィ+s('s)を付けます。通貨も同様です。

a day's wait, an hour's delay, 5 day's hard work, a few hours' time, 6 months gestation, 2 cents' worth of adviceなど。


プライム符号

プライム符号(' :分、フィートなどを表す)をつける場合はアポストロフィーは用いてはいけません。プライム符号は測定記号としては用いません。

The methyl group was in the 5' position.

 

 

 

「論文翻訳のチェックポイント」コーナーの記事、前回のスラッシュに続いて、今回は丸カッコ "( )" を紹介します。

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論文では図や表、補助的な文章を補うため丸カッコ"(xxx)"がたびたび使われます。カッコは、読者に論文の文書内において特別な気づきをさせるための役割を担っています。また、カッコを使った文章の場合、句読点をカッコ内につけるのかカッコの外につけるのかといった注意点もありますので、それぞれのケースについてご紹介しましょう。


補足的な表現

カッコは前述したように補足的な表現、識別、読者への指示、あるいは翻訳を示すために用いられます。以下の例文は基本的によく使われるものです。

  • Asymmetry off the upper part of the rib cage (patient 5) and pseudoarthrosis of the first and second ribs (patient 8) were incidental anormalies (Table 3).
  • In this issue of THE JOURNAL (p 999), a successful transplant is reported.
  • A known volume of fluid (100 mL) was injected.

但し、カッコを用いた場合が良い場合とコンマを使ったほうが良い場合があります。


コンマのほうが良い場合
: The hemoglobin leve, although in the normal range, was lower than expected. といったようにカッコ書きの資料とその後に続く文との間に深い関係がある場合はコンマのほうが良いとされています。


カッコのほうが良い場合
: namely(viz), that is(ie), for exampl(eg) という表現の後にくる思考の関係が付随的なものである場合はカッコを使います。例文としては以下の通りです。
He weighted the advice of several committee members (namely, Suzuki, Yamada, and Tanaka) before making his proposal.


カッコを使ったときの句読点

基本的に列挙の場合を除いて、始めのカッコの前には句読点を用いません。どの句読点も終わりのカッコの後ろにつけますが、カッコの内容が文に割り込む場合はちょっと注意が必要です。

例えば、カッコの内容が文に割り込む場合は、ピリオド(.)、疑問符(?)、感嘆符(!)はカッコの前に置くことが多いのですが、これも文章の作り方によって多少異なります。以下の例文は似たような内容ですが、文章の作り方によってカッコの句読点が異なります。

  • The discussion on informed consent lasted 2 hours. (A final draft has yet to be written.) The discussion failed to resolved the question.
  • The discussion on informed consent lasted 2 hours (a final draft has yet to be written) and did not resolve the question.
  • After what seemed ann eternity (It took 2 hours!), the discussion on informed consent ended.

また、カッコの中にいくつかの文を含む場合は、最後の句読点は後ろのカッコの前に置きます。

  • Oscar Wilde once said (When? Where? Who knows? But I reead it in a book once upon a time, hence it must be true.) that "anyone who has never written a book is very learned." 


識別のための数字/文字

数字や文字によって識別される項目が、論文の中で後で記述されるときはその文字や数字はカッコに入れます。

  • You then follow (3), (6), and (7) to solve the puzzle.

但し、カテゴリー名が代わりに用いられるときは、"Steps 1, 2, and 3 must be done slowly."といったようにカッコを用いる必要はありません。

また、文章の中で短い列挙をする場合は数字や文字はカッコで閉じます。

  • The patient is to bring (1) all pill bottles, (2) past medical records, and (3) our questionnaire to the first office visit.


参考文献

本文に出てくる参考文献についてはカッコ内に記載します。

  • The case was originally reported in the Archives of Surgery (1974;157:256-258).

図の説明文

図の説明文などで症例や患者の合成図の部分部分を識別するのに用いることができます。日付などもカッコの中に入れます。

  • Figure 6. Facial paralysis on the right side (patient 3, March 14, 2005).

顕微鏡写真

関係のある倍率や染色法もカッコに入れます。

  • Figure 3. Marrow aspiration 14 weeks after transplantation (Wright stain, original magnification X 600).

商品名

論文著者が薬剤あるいは機器に商品名を書くときは、本文および抄録において一般名および初めて使ったすぐ後で商品名をカッコ書きにします。

  • Treatment included oral administration of indomethacin (Indocin), 25 mg 3 times a day. 


略語

論文本文で5回以上用いられるときは、まず正式名称で記述した後すぐに省略形をカッコ書きにします。


注釈脚注

カッコの中の文は一つのまとまった見解ですが、本文に対しては単なる挿入的なものなので、最後の句読点は終わりのカッコの前につけます。

また、カッコの中でさらにカッコ内の表現をしたい場合は、中のカッコは角カッコにします。
(xxxxx [bbbb] xxxx.)


複数形

単数あるいは複数を示すとき、複数の可能性を表現するのに、"s"あるいは"es"とともにカッコを使います。この表現を使う場合は、動詞は単数形を使うことに注意しなければなりません。

  • The name(s) of the editor(s) of the book in rerference 2 is unknown.

 

 

 

本ブログの「論文翻訳のチェックポイント」 コーナー、久々の記事更新です。

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スラッシュ( / )は、論文で多く使われる斜めの線です。このスラッシュは、per, and, orなどを意味し、構成要素を分けるために用いられます。どのような場合に用いられるか、それぞれのケースについての注意点を見てみましょう。


(1)同等性あるいは二元性を表す場合


同等性:二つの語や表現が同じ重みを持っていてその二つの語の間でandの意味を表したい場合はスラッシュを用いることができます。

  • 同等性の英語の例文⇒One needs a  hot/cold environment in which to carry out the expriment.

二元性:下記のような例文ですと、前の文章ですでにHiroshi and Yumiとしているので、このような二元性の問題が生じる場合はスラッシュを使わずorなどを使います。

  • 二元性の英語の例文⇒Hiroshi and Yumi said they are coming. Now I need to know whether he or she will be bringing the extra chairs.(但し、よりよい文章表現としては、Now I need to know which of them will be bringing the extra chairs.のほうが望ましい)


(2)per(当たり)を意味するのに用いる場合

 「~当たり」を表す文章にもスラッシュが使われますが、このperを表す構文においては以下のような条件があります。

  1. その文に測定単位(時間を含む)を伴う
  2. 少なくとも一つの要素が特定の数量を含む
  3. そのすぐ隣にある要素が特定の数量あるいは測定単位のいずれかである

     英語の例文

  • The hemoglobin level was 140 g/L.
  • The  CD4+ cell count was 0.20 X 109/L(200/uL).
  • Blood volume was 80 mL/kg of body weight.
  • Respirations were 60/min; pulse rate was 98/min.


以下のような場合、スラッシュは用いるべきではありません。

  1. 前置詞句が二つの要素の間にある
  2. いずれの要素も特定の数量を含まない
  3. 非技術的な表現の構文

     英語の例文

  • 5.3 mmol of potassium per liter
  • expressed in milliliters per minute
  • 2 days per year


(3)その他スラッシュを用いる構文(日付・方程式・略語にした項目の比を表す場合)

  • スペースを節約するため、表や図の場合だけ日付を表すのにスラッシュを用いることがあります。
  • 同じ行に並べられ、センタリングされているのではなく、本文に組み込まれ、区別されている方程式の場合は、分子と分母を分けるのにスラッシュを用います。
  • 略語にした項目の比を表す場合、スラッシュが用いられる場合があります。例えば、the SUN/Cr ratio was greater than 10:1.というような場合です。この種の構文は、ハイフンを使って表現する場合もあります。ハイフンの場合は、the serum urea nitrogen-creatinine ratio was greater than 10:1.というように、略語を使用しない場合に使用します。

 

 

 

二者間で契約を結ぶ際、英文契約書と他の言語による翻訳文を作成するケースもあります。一方の契約当事者が英語圏にある企業である場合はともかく、両当事者が非英語圏にあれば、契約書の文言にはよく注意を払う必要があります。


英語を中立語として英文契約書を作成するにあたり、通常は一つの条文を設け、「本契約の本文は英語であり、それは他の言語によるその翻訳文に優先する」旨定めます。文字通り、英文契約書が事実上の"オリジナル"となるわけですが、その際は英語とその背後にある(特に英米法に引っぱられた)法律的考えを十分に理解しておくことが求められます。理解が足りなかったが故に、せっかく締結まで漕ぎ着けた契約文言で自らの首を絞めることにもなりかねません。


国際条約では加盟国各自の言語を複数使用して条約文を作成することが多くあるでしょうが、こと国際取引契約においては勧められたやり方ではないでしょう。


契約当事者間で2つの異なる言語で同じ内容を契約文にした場合、取引上あるいは法律的に全く同一の内容であるとは必ずしも言えません。例えば、中国企業と日本企業間の契約で中文と和文双方の契約書をオリジナル(正本)とした場合、両契約文とも意味が両国の取引慣行上または法律上微妙に異なる箇所が出てくる可能性があり、それによって契約履行上の紛争の種を背負いこむことが想定されます。


翻訳の性質上、異なる言語間で同じ内容を表現するにあたり、誰もが全く同一の意味にとれるような内容のものを仕上げることなど不可能と言っても過言ではありません。ましてや契約書という一つひとつの文言に利害関係が直接絡んでくるような内容においては、極力双方の行き違いを避けねばなりません。従って、契約文はなるべく英語一本に絞るよう交渉するのが得策と思われます。もちろんその際は、先述の通り英文の契約書を取引上そして法律的にもよく理解することが基本条件となります。


他にも、契約交渉における力関係のために、相手側当事者の母国語による契約書に同意を迫られることがあるかもしれません。その場合、日本の企業側としては相手国の取引慣行・法律・言語の細かいニュアンスのわかる契約専門家を参画させることが理想的です。間違っても「素人の翻訳」に頼ってはいけません。


次回の記事では、私共ループ・インタープリターズが実際にあるクライアントの案件でその「素人の翻訳」に遭遇したケースを紹介したいと思います。

 

 

 

今年に入ってからチェスを題材にした小説2冊が刊行されました。

先ずは1冊目の紹介。これは先月下旬に出たばかりです。

 
モーフィー時計の午前零時_1.jpgのサムネール画像    モーフィー時計の午前零時★

 Midnight by the Morphy Watch and other stories

著者:ジーン・ウルフ、フリッツ・ライバー他
編者:若島正

発行:国書刊行会

 

「モーフィー時計の午前零時」は、海外のチェス短編小説を集めたもの(チェス小説アンソロジー)で、日本語訳で本書に収められている計11篇どれもが傑作と言われる作品のようです。細かな説明はAmazonサイトなどで見ることができるので、ここでは別の視点から紹介したいと思います。


 


本書に付いている帯にはこんなことが書かれています。(↓)

  モーフィー時計の午前零時_2.jpg



チェスについて、そのゲーム感覚だけでなく芸術性にも魅せられた私にとっては、購買意欲をググッとそそるような文言となっています。

将棋の羽生名人がチェスも指すことは知る人ぞ知る事実で、以前本ブログの記事でも紹介したことがあります。

ここにもう一人、小川洋子さんという女性作家のコメントもありますが、実は次に紹介するもう一冊の本の著者です。この「モーフィー時計の午前零時」の冒頭では、6ページにわたって小川洋子さんによる『チェスという名の芸術』という前文が載せられています。皮肉なことにご本人はチェスを指せないようですが、チェスが織りなす世界観に魅せられた一人であることは間違いありません。その前文の一部を断片的ですが紹介します。


(以下、前文『チェスという名の芸術』から抜粋)

《知らない世界を知るのは楽しかった。チェスが将棋とは逆に、激しくスタートして静かに終わるゲームであること、必ずしも最強の手が最善の手とは限らないこと、昔"トルコ人"と呼ばれる自動チェス人形が存在し、火事で燃えたこと、有限であるはずの盤と駒が永遠を隠し持っていること、棋譜が美を表現できるものであること等など、・・・教わった。》


《チェス盤が美を映し出すのであれば必ず小説になると、私は確信した。ルールを覚えるより早く、どんどん小説のイメージは膨らんでいった。》


《チェスの秘密が文学を通して語られる時、そこには予想もしない世界が現れ出る。人間が考え、人間がこしらえたゲームであるはずのチェスに、人間を超えた宇宙が出現することを、本書の小説たちは指し示してくれる。チェスとはそういうゲームなのだ。》


《チェスを題材にした小説を読む時、いつも私が心を揺さぶられるのは、主人公が生まれて初めてチェスと出会い、駒を動かす場面である。・・・チェスと少年、これは黄金の組合せだ。高すぎるテーブルに向かって、背伸びするように手を伸ばす姿、ポーンよりもか細い指、床に届かずぶらぶらする足、一点を見つめる澄んだ瞳。こうした少年の持つ未熟さと、チェス盤の永遠が呼応する時、私はたまらない気持ちになる。》


《チェスの最も恐ろしい側面は、盤に人間のすべて、宇宙のすべてが映し出される、という点にあると思われる。私は取材の折々で、盤上では何も隠しきれない、という意味合いの言葉を耳にした。「必殺の新戦法」によれば、駒の織りなすパターンには、"人間が考えうる範囲内のものと範囲外のもの"があるらしい。更にこの"範囲外"が打ち破られた時、"宇宙の秩序についておよそ言語を絶するような事実"が浮かび上がってくるというのだ。》


《やはり、チェスは凄いゲームだ。チェスという名の芸術だ。》

 
《「美しいなあ!」 この一言が、・・・すべてを物語っている。もしチェスの本質をつかみ取るとしたら、この一言以外にはあり得ないだろうということを、私に教えてくれる。》

 

いかがでしょうか。いかにも文学者らしい表現ですが、チェスをこよなく愛する私としては小林洋子さんの想いがよくわかる気がします。


本書の装丁も結構凝ったものになっていて、カバーの表紙側を広げてみると以下のようになっています。この画像ではよくわかりませんが、タイトル部はゴールド色でデザインされています。

 

モーフィー時計の午前零時_3.jpg 


さてもう一冊ですが、先述の小川洋子さん自身の作品です。これは1月の刊行です。 

 

猫を抱いて象と泳ぐ.jpg猫を抱いて像と泳ぐ★

著者:小川洋子

発行:文藝春秋

 

本書は、2/15付日経新聞の日曜書籍紹介コーナーでも取りあげられ、Amazonなどのカスタマーレビューでは大分好評のようです。これは一本の長編小説です。


主人公は、リトル・アリョーヒン(少年)という伝説のチェスプレーヤー。彼は、アレクサンドル・アレクサンドロヴィチ・アリョーヒン(1892-1946)というロシアに実在した伝説的チェスプレーヤーになぞらえてそう呼ばれています。

【アレクサンドル・アレクサンドロヴィチ・アリョーヒンは、多くの美しい棋譜を残し、「盤上の詩人」と称えられています】


・・・と、内容についてはこの程度にして、あとは是非本書の特設サイトを見てみてください。このサイトには、ストーリーのあらすじはもちろんのこと、『チェスの世界』というコーナーもあり、そこではアレクサンドル・アリョーヒンの実際の対戦中を写した写真、あるいは"盤上の詩人"が残した棋譜など、チェスファンにはたまらない資料が埋もれています。結構感動ものです。


ここではチェス好きならではの視点からということで、以下を紹介します。


本書の冒頭に登場するチェス盤と駒のイラストに付随している各駒の説明を紹介します。チェスに魅せられた著者がそれぞれの駒の役割を文学的な表現でまとめています。


キング
決して追い詰められてはならない長老。

クイーン
縦、横、斜め、どこへでも。最強の自由の象徴。

ビショップ
斜め移動の孤独な賢者。祖先に象を戴く。 

ナイト
敵味方を「く」の字に飛び越えてゆくペガサス。

ルーク
縦横に突進する戦車。

ポーン
決して後退しない、小さな勇者。


これらチェスの駒がこの『猫を抱いて像と泳ぐ』のストーリーのなかでどのような役割を果たし、どのように表現されているのか、何とも楽しみです。

 

以上が2冊の紹介ですが、どちらも私は購入済みです。未読ですが、今からわくわくしています。

 

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話は変わりますが、「モーフィー時計の午前零時」の編者である若島正さんと上記の小林洋子さんの対談『チェスと文学』が「文学界」2009年2月号に掲載されています。その内容の一部をインターネットで閲覧することができます。(文藝春秋 文学界のページ ← このページの上部にある"立ち読み"というコーナーに両氏の対談があります)
 

文学界 2009年2月号.jpg
この対談記事のサブタイトルには、「チェスと文学の共通項は何か?二人の才能が、チェスと言葉の持つ深遠な世界を語り合う」と表現されていることから、きっと読み応えのある内容であると期待しています。私はもちろんすべて読みたいので、図書館に貸出の予約を入れておきました。(この対談だけのために買うのはバカらしく思え・・)


これまで読書といえばビジネス系に偏りがちだった私ですが、チェスとの出会いをきっかけにすっかり芸術性にも目覚めてしまいました。

この記事では、【チェスと文学(=言語)】がテーマにもなっているわけですが、私は通訳・翻訳事業という、言葉を商売道具にする会社の経営者として、チェスと言語や文化をもっとつなげて考えられないか・・ ということに思いを馳せることしばしばです。

 

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