先日チェスに関するある記事でチェスの強さに関する研究結果が報告されていました。
その記事のタイトルは、"Handedness, practice and talent in chess" (意訳:「チェスの強さに見る利き手・研究姿勢・才能との関係」)で、「チェスの強さと利き手とにどんな相関があるのか?」、「チェスを学ぶにあたって臨界期(ある種の技能や行動が発達するために最も効果的にこれを準備する時期)はあるのか?」、「ある相当のレベルの強さに達するまでどの程度の期間を要するのか?」といった観点で2人の学識者がまとめた研究報告となっています。どちらの学識者もチェスに精通し心理学を専門としています。
一人はGuillermo Campitelli氏(アルゼンチン人)で、1997年に数多くのアルゼンチン チェスプレーヤーのコーチを務めています。コーチングを受けたプレーヤー達は後にGM(グランドマスター)やIM(インターナショナルマスター)となっています。同氏はそれ以降、研究者としてチェスプレーヤーについてその記憶力、心象、思考、意思決定などの土台を成す精神的プロセスに焦点を当てた研究を手掛けています。研究では、機能的磁気共鳴を駆使してGMとIMの脳をスキャンするといった実験を行ったこともあります。
もう一人はFernand Gobet氏(スイス人)で、現在の教授職に就く前は本格的なチェスプレーヤーでした。スイスナショナルチームの一員であったこともあり、インターナショナルマスターの称号を得ています。今はロンドン西部に位置するブルネイ大学で認知心理学の教授として教鞭を執っています。
研究の対象となったのはアルゼンチン人のチェスプレーヤー計104名で、3人のGM(グランドマスター)、10人のIM(インターナショナルマスター)、13人のFM(FIDEマスター)、その他称号を持たないプレーヤーで構成されています。
記事の内容ですが、ここではポイントのみを紹介します。以下の通りです。
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★チェスの強さとチェスに費やす時間の長さには高い相関関係がある。
★チェスは空間視覚能力を駆使するゲーム(visuospatial game)である。チェスの強さは空間視覚プロセスをつかさどる脳の構造と深く関わっていると言える。そうした構造は脳の右半球に位置している傾向があり、脳が「配線されている」("wired")と仮定するならば、人体の左半身機能を支配している。よって、 (ある程度高いレベルにある)チェスプレーヤーには左利き(left-handed)ないしは両手利き(ambidextrous)である人の割合の方が高く、これは一般を対象にした「右利きでない人」の割合より高いことが顕著に表れている。
★チェスの強さとチェスを始めた年齢に相関があると思われる。
言語を学ぶこと同様、チェスを学ぶことに関しても臨界年齢(critical age)があるはずである。(臨界年齢を過ぎてしまうと、後に高いレベルに到達するのが難しくなる )
研究のあるデータでは、チェスに真剣に取り組み始めた年齢と、その後到達しているチェスのレーティング(ランキング)とに高い相関が見られる。何らかの称号を得ているチェスプレーヤーのほとんど全員が、12歳までに真剣にチェスに取り組み始めている。
★チェスの研究姿勢についても注目すべき傾向がある。チェスのレベルを上げる方法にはいろいろあるが、世界ランキングの高いプレーヤーほどコーチの登用、データベースの利用、早指し対局(playing blitz)をしている傾向にある。また、ランキングの高いプレーヤーほどチェスに関する書籍を多く持っている。
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以上、言われてみれば当たり前と思える内容もありますが、高いレベルにあるチェスプレーヤーには左利きの人の割合の方が高いという点は面白いと思いました。チェスが頭脳ゲームの一種である以上、心理学者が脳科学に結び付けた研究を通してチェストッププレーヤー達に共通する傾向や要素を明らかにすることは自然な展開と言えます。最近はここ日本でも脳の機能に関する書籍やテレビ番組が大分取り上げられています。
ただそうした専門家による研究でも測り得ない要素があります。それは、直感やひらめきです。実は、そうした部分を自分で磨く術(すべ)を知っている人こそが、どんな世界においても他より抜きん出ているのではないかと思います。直感やひらめきは一人ひとりの個性と密接に関係しており、自分自身のスタイルを確立していくなかで磨きあげていく他に方法はないと言えます。

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