2009年2月アーカイブ

 

world chess challenge logo 1.jpgTopalov won the match !, qualifies for World Championship Final.   

 

 ブルガリアの首都ソフィア(Sofia)で開催されていた World Chess Challenge Sofia 2009 の第7戦が26日に行われ、Veselin Topalov(ブルガリア:以下、Topalov)が白(White pieces)の先手で勝利を収め、第8戦を残して見事今大会に決着をつけました。

これでTopalovは今年秋頃に開催予定の世界チャンピオンシップ マッチで現世界チャンピオンのViswanathan Anand(インド:以下、Anand)と対戦する資格を得たことになります。


World Chess Challenge Sofia (BUL), 17-27  2009
Name  NAT  Rtng   1   2   3   4   5   6   7   8    Total   Perf
Topalov, Veselin    BUL  2796   ½   1   ½   0   1   ½   1    -     4½   2827
Kamsky, Gata    USA  2725   ½   0   ½   1   0   ½   0    -     2½   2694

以上は今大会の結果ですが、全体を振り返ってみると総じてTopalovが一枚上手であったと言えるでしょう。

Topalov wins!_game 7.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先手・白(White pieces)Topalovの45手目で投降(=resign)するGata Kamsky〈米国:以下、Kamsky〉。


実際には、41手目の時点でKamskyが持ち時間を使い果たし勝負が決していましたが、最後まで勝負は続けられました。

 

 

 

 
この第7戦は今大会で最も見応えのあるゲームであったと報じられています。(=It was the most spectacular game of the match.)オープニング以降の展開は、両者が激しく火花を散らすような攻防であったとのこと。(=after the opening the board was set on fire.)


Opening_game 7.jpg
24手目を終えるまでに費やされた時間はTopalov、Kamsky双方共同様(1時間20分程)でしたが、25手目から両者の時間配分に明らかな差が生じ始めます。


次の25手目を指すのに先手・白のTopalovは13分程を費やし、対するKamskyは約30分もの時間を要しました。27手目を終えた時点での両者の残り持ち時間は、Topalovの32分に対しKamskyは8分弱。Kamskyが精神的に追い詰められていく様子がわかります。そこへさらにプレッシャーをかけるかのごとくTopalovは29、30手目の打ち手に時間をかけずKamskyに詰め寄っていきます。


そしてチェスファンをうならせたTopalovの32手目"Qc7!" に対し、残り持ち時間2分しかないKamskyが指した手は"Rc8?!" 。これが完全なミスであり(=The final mistake)、この時点で勝負はついていたと評されています。いずれにせよ、41手目の時点でKamskyは持ち時間を使い果たしてしまい、事実上勝負は決しました。その後もゲームは続きましたが、結局Topalovの45手目に対しKamskyが負けを認めたかたちで幕を閉じました。



Chess in the relax zone.jpg
今大会におけるKamskyの敗因は、主に時間配分であったと報じられています。Topalov、Kamsky双方共、今大会の対戦を振り返り「非常に複雑なゲーム展開であった」とコメントしていますが、同時に各々がTopalovサイドのミスの少なさを勝因として挙げています。つまり、Kamskyの時間配分ミスは、自身のミスによってもたらされたものであることがわかります。


この第7戦後の記者会見で、Kamsky自身は「"Rb8"(31手目)が致命的であった」と述べています。また、ある記者の「10年間チェス界から身を引き、またこうして世界戦の舞台にいる今、あなたのチェスに磨きがかかったと思いますか?」という質問に対し、Kamskyは笑みを浮かべながら "No,I don't think so..." と語りました。


 Topalovはこれで4月1日付けのFIDE(国際チェス連盟)レーティングで優に2800を超えることが確実となってきました。世界ランキング1位の座をより確固たるものにするのは間違いなさそうです。


Anand advertisement.jpgのサムネール画像今年秋頃に予定されているWorld Chess Championshipは「現世界チャンピンAnand VS 世界ランキング第1位Topalov」の対決となり、事実上の頂上決戦となります。去年10月に行われた前大会では、挑戦者のVladimir Kramnik(ロシア)を寄せ付けずタイトルを保持しているAnandですが、このTopalovが史上最強の挑戦者となることは必至でしょう。

 

 

 

Both players_game 6.jpgブルガリアの首都ソフィア(Sofia)で開催されている World Chess Challenge Sofia 2009 の第6戦が24日に行われ、第1・3戦に続く引き分け(draw)に終わりました。


昨日の第5戦で敗北を喫したGata Kamsky(米国:以下、Kamsky)としては、この第6戦では白(white pieces)の先手ということで何とか勝利し再びタイスコアに持ち込みたかったところですが、対するGataTopalov(ブルガリア:以下、Topalov)の斬新な打ち手を前に有利にゲームを展開することができなかったと報じられています。


これで本大会における通算獲得ポイントは3[1/2]-2[1/2] で、Topalovのリードのまま推移しています。

During the game  1_game 6.jpgのサムネール画像 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

During the game 2_game 6.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この第6戦のオープニングで、Topalovは対する白Kamskyの"e4" に対し"c6" と、第2・4戦から戦術を変えてきました。(Ruy LopezからCaro-Kannへ)

その理由として、KamskyがRuy Lopezの展開から有利にゲームを展開する術を心得ているということを、Topalovサイドが第2・4戦の経験から感じ取ったからに他ならないと言われています。Caro-KannはTopalovがよく使う戦術ではないと言われていますが、ここ最近の公式戦でも何度か用いているようです。その点についてKamskyサイドは承知しており、このTopalovによるオープニングはKamskyにとって驚きには値しなかったであろうとも報じられています。


何より今ゲームで注目されたのはTopalovによる11手目"g6!?"で、斬新な打ち手(An interesting novelty)として評されています。そして、その後15手目の"Rc8!"によってTopalovはKamskyの優勢なゲーム展開を許さず五分五分に持ち込むことに成功します。



draw_game 6.jpg

 

 

 

結局、43手目を終えたところで両GM(グランドマスター)がドロー(draw=引き分け)で同意します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


次の第7戦は26日に行われます。(25日は休息日:rest day)
本大会も残り2ゲームとなり、Topalovにとってはあと1勝すれば現世界チャンピオン Viswanathan Anand(インド)への挑戦権を手にすることができます。第7戦はTopalovが白の先手ということで、当人としてはここで一気に決着をつけたいところです。対するKamskyとしては、第7戦をドローで乗り切り、最終第8戦で勝利し、タイブレーク(Tie breaks:同点決勝ゲーム)に持ち込みたいといったところでしょうか。

 

 

world chess challenge logo 1.jpgブルガリアの首都ソフィア(Sofia)で開催されている World Chess Challenge Sofia 2009 の第5戦が23日に行われ、Veselin Topalov(ブルガリア:以下、Topalov)が白(White pieces)の先手で勝利を手にしました。


これで本大会における両者の通算獲得ポイントは3-2となり、Topalovがまた一歩リードしたかたちになります。 対するGata Kamsky(米国:以下、Kamsky)は前回第4戦で(過去通算でも)初めてTopalovに勝利し本大会の獲得ポイントでTopalovに並んだところでしたが、この第5戦ではゲーム中盤で大失策を演じてしまったようです。


Opening_game 5.jpgゲーム オープニングでは、Topalovの"e4"に対し、後手・黒(Black pieces)のKamskyが"e6"と誰もが想定していなかった戦術(French Defence)を取りました。これはKamskyが過去に公式戦で取ったことのないオープニングであると報じられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


この第5戦でのKamskyの敗北を決定づけてしまったのは、35手目の"Nb4??"であったようです。チェス解説者の間では、まさに「大失策:a big(terrible) blunder」であったと評されています。その機を逃さず勝利を獲得したTopalovはさすがといったところです。


Kamsky_game 5.jpg 

 


 

 

 

 

 

 

 

  Topalov_game 5.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日の第6戦は、Kamskyの白(White pieces)先手です。残り3ゲームとなった今、Kamskyとしては何とか第6戦に勝利し再びタイスコアに持ち込みたいところです。



ところで、このWorld Chess Challenge Sofia 2009 は第5戦から後半戦となっていますが、本大会の競技規程(match regulations)にちょっとした手違いがあったようです。
World Chess Challenge Sofia 2009 公式HPでは以下の通り掲載されていましたが、実際、第5戦ではTopalovが先手(白:White pieces)でした。これには多くのチェスファンや報道関係者が驚きを隠せなかったようです。

"The colors shall be reversed after game 4. (The player getting the white color in game 1 shall play game 5 with the black color)." 

 
つまり、前半4戦と後半4戦とで先手(白)と後手(黒)のローテーション順序を逆にするという文言です。(第1戦で白の先手であったプレーヤーは、後半戦初めの第5戦では黒の後手となる)

この考えは、去年10月に行われたAnand(インド)対Kramnik(ロシア)の世界チャンピオンシップ マッチに倣って採り入れられた内容です。大会中、2ゲーム毎に入る休息日明けのゲームで片方のプレーヤーだけを白の先手にすることで有利にさせてしまってはならないというのが目的のようです。

ところが、実は去年11月にドイツのドレスデンで行われた両当事者間の交渉により、この規程は外されることが正式に決定していた経緯があったとのこと。それが公式HPに反映されていなかったという何ともお粗末な話であったようです。

 

さて、また番外編です。

前回第4戦の記事でも紹介した非常にインパクトのあるチェスセットについてですが、別の角度から撮られた画像もありますので紹介します。(↓)

 

Brilliant chess set 2.jpgこうして見ると改めて各ピースの美しさに見とれてしまいます。《肝心のキング(King)がひっくり返されてしまっていますが・・》 それにしても見事です。何となくヨーロッパの歴史を思い起こさせる雰囲気を醸し出しています。

  

 

world chess challenge logo 3.jpgブルガリアの首都ソフィア(Sofia)で開催されている World Chess Challenge Sofia 2009 の第4戦が21日に行われ、Gata Kamsky(米国:以下、Kamsky)が地元ブルガリアのVeselin Topalov(以下、Topalov)を73手目で敗りました。


この第4戦で今大会の前半戦が終了したことになりますが、両者の今大会における通算獲得ポイントが並び、チェスファンとしては非常に見応えのある展開となってきました。


Kamskyにとっては、過去の全対戦を通して初めてTopalovから勝利を獲得したことになります。(両者は過去に8度対戦しており、Topalovの4勝と4引き分けに終わっています)この第4戦での勝利により、Kamskyが勢いづいてくるのか、はたまたTopalovが再度攻勢を強めるのか非常に見ものです!

 

5手目の"Be7"を打つTopalov。

During the game 1_game 4.jpg


 第4戦についてはKamskyに称賛の声が上がっています。("It was an impressive performance by the American GM.";GM=GrandMaster) 自身の得意とするポジションを取ろうとするなかでTopalovのミスを誘います。


During the game 2_game 4.jpg

 

特に中盤におけるKamskyが打った26手目の"b3 !?"は、「非常に画期的で驚きのポーン サクリファイス(捨て駒)」("A surprising and very creative pawn sacrifice.")と評されています。その後のTopalovの攻めには正確性を欠く場面も見られたとのこと。


Topalovにとっては地元開催ということもあり、その注目度の高さは言うまでもありませんが、今大会の前半戦を終えたところで当人としては自分の望むような展開にはなっていないのかもしれません。白の先手では序盤(オープニング)からなかなか有利な展開に持ち込めず、黒の後手ではKamskyの戦術に押され気味といったところでしょうか。



Kamskyの73手目で勝負が決する場面。

Ending_game 4.jpg

 

さて、番外編として面白い画像を2つ紹介します。(↓)

Brilliant chess set.jpg

大きさといい、各ピースのリアルさといい非常に立派なチェスセットですね。通常購入できるチェスセットでは、メタルチェスセットにこのようなリアルさがあります。私はチェスセットを3種類持っているのですが、今までメタルチェスセットには興味が持てず一つも所有していません。しかしこの迫力あるピースを見て、また違った魅力を感じ始めているところです。


(↓)次にロシアのモスクワで撮られたもので、氷を削ったチェスセットです。チェス大国のロシアらしい表現の仕方です。日本が誇る将棋の駒ではこのような楽しみ方はできないでしょうから、チェスならではのアートさが感じられます。こんな氷の彫刻が街の一角にあると、子供たちが喜ぶでしょうね。

Ice sculpture in moscow.jpg 

World Chess Challenge Sofia 2009 の第5戦は、22日の休息日を挟んだ23日に行われます。

両世界トッププレーヤーの熱い戦いに乞う、ご期待!!

 

 

ブルガリアの首都ソフィア(Sofia)で開催されている World Chess Challenge Sofia 2009 の第3戦が20日に行われ、第1戦同様引き分け(draw)に終わりました。


world chess challenge logo 1.jpg


Veselin Topalov(ブルガリア:以下、Topalov)が白(White pieces)の先手で始まった第3戦の序盤(オープニング)は第1戦と同じ展開でした。Topalovは4手目で"Qb3"と第1戦から戦術を変えますが、対する後手黒(Black pieces)のGata Kamsky(米国:以下、Kamsky)は難なく対処し、後に優勢な展開へとつなげていきました。ちなみに、Topalovの4手目"Qb3"、すなわち"Russian Variation"は、同氏がかつて取ったことのない戦術であると報じられています。


Just started_game 3.jpg


Kamskyは前回第2戦の敗因を教訓にしたのか、第3戦では時間配分でハンデを負うようなことはなく、慎重に正確な打ち手を繰り広げ、第1戦同様黒の後手で有利にゲームを展開したようです。(once again Kamsky had the initiative with the black pieces)


Kamsky 1_game 3.jpg
Topaov 1_game 3.jpg
Kamskyは第2戦での敗北を物ともせず、Topalovの攻撃を封じ込めた感があります。次の第4戦はKamskyが白(White pieces)の先手です。この第3戦の引き分け(draw)はKamskyの反撃のきっかけとなるでしょうか。第4戦は今大会の勝敗を左右する闘いとなるかもしれません。

 

 

  

world chess challenge logo 2.jpgブルガリアの首都ソフィア(Sofia)で開催されている World Chess Challenge Sofia 2009 の第2戦が18日に行われ、地元ブルガリア人のVeselin Topalov(以下、Topalov)が黒(Black pieces)の後手で勝利を手にしました。

 

 

 

kamsky with a metal detector_game 2.jpg 

 

ステージに入る前、金属探知器で身体チェックをされるGata Kamsky(以下、Kamsky)。
世界トッププレーヤーどうしの対戦では、ここまで徹底してボディチェックをするのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

ゲーム開始に向け、各ピースを並べ整えるTopalov。

Topalov adjusting his pieces_game 2.jpg


対するGata Kamskyのゲーム開始直前の表情。

Kamsky before the game_game 2.jpg

 

 両プレーヤーが第一手を指し終えた場面。

First move_game 2.jpg

 

 第2戦では、序盤からKamskyがTopalovの指し手に熟考する場面が目立ち、ゲーム後半での持ち時間でハンデを負う展開となってしまいました。とりわけTopalovの4手目は驚きの一手であったと後に評されています(a big surprise on the 4th move)。


ゲーム後半で時間との闘いも強いられたKamskyとは対照的に、Topalovの後半における指し手は非常に正確で(super-accurate moves)、Kamskyの防御を着々と切り崩していく展開であったと報じられています。結局32手を指したところでkamskyの持ち時間切れとなってしまいました。

 

Kamskyの敗北が決まる場面。背後のスクリーンに「残り59秒」と表示されています。

Ending the game_game 2.jpg


 
ゲーム後、記者会見の場にて。白(White pieces)の先手で敗北を喫したKamskyの表情。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
子供たちからサイン攻めにあうTopalov。Topalovにとっては地元開催ということで、ファンサービスにも忙しそうです。

Topalov after the game_game 2.jpg

 
次の第3戦は19日の休息日を挟んだ20日に行われます。

 

 

world chess challenge logo 2.jpgブルガリアの首都ソフィア(Sofia)で開催されている World Chess Challenge Sofia 2009 の第1戦が17日に行われ、引き分け(draw)に終わりました。


第1戦は地元ブルガリア人のVeselin Topalov(以下、Topalov)が白(White pieces)の先手で幕を開けました。


中盤、Topalovが17手で定石にはない新たな指し手で相手のキングを鋭く攻め込もうとしますが、対戦相手のGata Kamsky(ロシア生まれの米国人:以下、Kamsky)はそれに動じることなく、一時は有利なゲーム展開を繰り広げました。Kamskyが黒(Black pieces)の後手であることを考慮すれば、第1戦は精神戦という意味でKamskyに軍配があがるであろうと報じられています。
(a small psychological victory for Kamsky)

 

playing_game 1.jpg


  at the stage_game 1.jpg



ゲーム終了後、両プレーヤーが去ったボード上にはキングが中央に並べられ・・
(ゲーム終了時、ボード上にあったはずの"h3"ポーンが盤外にありますが)

After the game_game 1.jpg

 

ちなみにこれが会場です。(↓)

The National Palace of Culture.jpg

"The National Palace of Culture" という複合施設です。アートやビジネス、あるいは政治の世界などにおいて、さまざまなイベントに活用されているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

world chess challenge logo 3.jpg本日16日からブルガリアの首都ソフィア(Sofia)で "World Chess Challenge Sofia 2009" が開幕します。16日はオープニング・セレモニーのみで、第1戦は翌日17日の午後3時(現地時間:日本時間では午後10時)スタートです。


日本と現地との時差は7時間のbehind(遅れ)ですから、オープニング・セレモニーが始まる午後6時ですと日本時間では深夜午前1時(17日)ということになります。オープニング・セレモニーの前には記者会見も開かれ(現地時間午後2時~ =日本時間午後9時~)、いずれもライブ中継されるようです。
(対戦の模様は本大会の公式ウェブサイト上でインターネットライブ配信されるようです。)


このチェスの大会では、2人の世界トッププレーヤー(Grandmaster)が8ゲームの一騎打ちを繰り広げます。この大会での勝者は、後に開催されるWorld Championshipで現世界チャンピオンのViswanathan Anand(インド)と対戦する権利を手にします。(去年10月に開催された "World Chess Championship 2008" については本ブログでも各対戦を紹介しました。Viswanathan Anandがタイトルを保持したことは記憶に新しいです)


プレーヤーの一人は地元ブルガリア人であり現在は主にスペインに居を構えるVeselin Topalov(以下、Topalov:下画像の右側)。同氏は過去に世界チャンピオンの座を手にしたことがあり、現在の世界ランキングでも第一位と誰もが認める実力者です。


対するはロシア ノヴォクズネツク(西シベリア中部)生まれの米国人Gata Kamsky(以下、Kamsky:下画像の左側)。現在の世界ランキングは17位。1996年にWorld Championship(20-game match)でAnatoly Karpov(ロシア)に敗北を喫した後、しばらくチェスの世界から身を引いていました。2004年に復帰し、また世界タイトルを狙う位置にまで返り咲いています。


world chess challenge logo 1.jpg

 

 前評判では、圧倒的にTopalov有利とされているようですが、FIDE(国際チェス連盟)では両者の勝算は五分五分としています。(そのFIDEの見解には、これといった確固たる根拠が見当たらないようですが)

両者は過去に8度対戦しており、対戦成績はTopalovの4勝と4引き分け。つまりKamskyはTopalovから1勝も獲得できていません。そうしたデータと最近の両者の戦いぶりから、Topalovが大本命(a clear favorite)と目されて当然と言えるのでしょう。

しかし、Topalovが最近のあるインタビューでKamskyについて「非常に手強い相手で、鉄のごとく強靭な精神力の持ち主(Gata Kamsky is a great fighter and has nerves of steel.)」と評している通り、今大会は終始タフなゲーム展開になることも十分想定されます。


明日からの両者の闘いぶりに注目です!

 

 

 

Black & White pieces.jpg先日チェスに関するある記事でチェスの強さに関する研究結果が報告されていました。


その記事のタイトルは、"Handedness, practice and talent in chess" (意訳:「チェスの強さに見る利き手・研究姿勢・才能との関係」)で、「チェスの強さと利き手とにどんな相関があるのか?」、「チェスを学ぶにあたって臨界期(ある種の技能や行動が発達するために最も効果的にこれを準備する時期)はあるのか?」、「ある相当のレベルの強さに達するまでどの程度の期間を要するのか?」といった観点で2人の学識者がまとめた研究報告となっています。どちらの学識者もチェスに精通し心理学を専門としています。

一人はGuillermo Campitelli氏(アルゼンチン人)で、1997年に数多くのアルゼンチン チェスプレーヤーのコーチを務めています。コーチングを受けたプレーヤー達は後にGM(グランドマスター)やIM(インターナショナルマスター)となっています。同氏はそれ以降、研究者としてチェスプレーヤーについてその記憶力、心象、思考、意思決定などの土台を成す精神的プロセスに焦点を当てた研究を手掛けています。研究では、機能的磁気共鳴を駆使してGMとIMの脳をスキャンするといった実験を行ったこともあります。

もう一人はFernand Gobet氏(スイス人)で、現在の教授職に就く前は本格的なチェスプレーヤーでした。スイスナショナルチームの一員であったこともあり、インターナショナルマスターの称号を得ています。今はロンドン西部に位置するブルネイ大学で認知心理学の教授として教鞭を執っています。


研究の対象となったのはアルゼンチン人のチェスプレーヤー計104名で、3人のGM(グランドマスター)、10人のIM(インターナショナルマスター)、13人のFM(FIDEマスター)、その他称号を持たないプレーヤーで構成されています。


記事の内容ですが、ここではポイントのみを紹介します。以下の通りです。
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Dresden 2008_1.jpg
★チェスの強さとチェスに費やす時間の長さには高い相関関係がある。


★チェスは空間視覚能力を駆使するゲーム(visuospatial game)である。チェスの強さは空間視覚プロセスをつかさどる脳の構造と深く関わっていると言える。そうした構造は脳の右半球に位置している傾向があり、脳が「配線されている」("wired")と仮定するならば、人体の左半身機能を支配している。よって、 (ある程度高いレベルにある)チェスプレーヤーには左利き(left-handed)ないしは両手利き(ambidextrous)である人の割合の方が高く、これは一般を対象にした「右利きでない人」の割合より高いことが顕著に表れている。


★チェスの強さとチェスを始めた年齢に相関があると思われる。

言語を学ぶこと同様、チェスを学ぶことに関しても臨界年齢(critical age)があるはずである。(臨界年齢を過ぎてしまうと、後に高いレベルに到達するのが難しくなる )
研究のあるデータでは、チェスに真剣に取り組み始めた年齢と、その後到達しているチェスのレーティング(ランキング)とに高い相関が見られる。何らかの称号を得ているチェスプレーヤーのほとんど全員が、12歳までに真剣にチェスに取り組み始めている。


★チェスの研究姿勢についても注目すべき傾向がある。チェスのレベルを上げる方法にはいろいろあるが、世界ランキングの高いプレーヤーほどコーチの登用、データベースの利用、早指し対局(playing blitz)をしている傾向にある。また、ランキングの高いプレーヤーほどチェスに関する書籍を多く持っている。

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以上、言われてみれば当たり前と思える内容もありますが、高いレベルにあるチェスプレーヤーには左利きの人の割合の方が高いという点は面白いと思いました。チェスが頭脳ゲームの一種である以上、心理学者が脳科学に結び付けた研究を通してチェストッププレーヤー達に共通する傾向や要素を明らかにすることは自然な展開と言えます。最近はここ日本でも脳の機能に関する書籍やテレビ番組が大分取り上げられています。


ただそうした専門家による研究でも測り得ない要素があります。それは、直感やひらめきです。実は、そうした部分を自分で磨く術(すべ)を知っている人こそが、どんな世界においても他より抜きん出ているのではないかと思います。直感やひらめきは一人ひとりの個性と密接に関係しており、自分自身のスタイルを確立していくなかで磨きあげていく他に方法はないと言えます。


Dresden Misc 040.JPG

 

 

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