翻訳の幅広い世界 ~ハリー・ポッターから源氏物語まで~

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「翻訳」といってもこの翻訳の世界は様々なジャンルに分かれており、翻訳会社だからといってすべての翻訳を扱うわけではありません。弊社のように、企業や研究機関を対象に契約書や特許、研究論文、技術文書を専門にするところもあれば、専門書や小説などの書籍翻訳、映画の字幕翻訳、音楽の歌詞翻訳など様々です。


企業や研究機関を対象にしていますと著作権そのものは依頼元の企業や研究機関にありますので、依頼された内容にいちいち翻訳者や弊社のような会社名がでることはありません。しかし、書籍や映画の字幕、そして歌詞翻訳では必ず翻訳者の名前が著者名とともに連名されます。これは、著作権の対象となり、翻訳者は二次的著作物(著作権法2条1項11号)の著作者となり著作権を有します。


少し専門的な話になりますが、現在の法律では、原則著作者生存期間と死後50年間は、原著作者の許諾がなければ翻訳することはできません。例えば、原作者がある本を出してから50年以上たっているものをある人が翻訳したとします。翻訳されたその本の著作権=経済的権利は翻訳者にのみあるということになります。なぜなら、原著作者は、二次的著作物の著作者と同一の権利を専有する(同28条)と規定されていますが、この経済的権利は、保護期間が存続する間しか主張できないからです。但し、原作者は、経済的権利は失うものの、人格権は原作者の死後も保護されます(同60条)。ですから、経済的権利がないからといって、原作を自由に変更したりすれば故意又は過失により人格権を侵害する行為になると考えられ、遺族(孫までの姻族)は、差し止め請求とともに名誉回復措置を請求することもできるのです(同116条)。また、海外の書籍を扱う場合、第二次世界大戦の連合国は、10年以上の戦時加算があり、米、英、仏などの国民の著作者は保護期間の計算方法が異なるようなのできちんと調査した上で翻訳をする必要があるようです。


さて、この経済的権利である著作料ですが、売れれば売れるほど儲かることはいうまでもありません。翻訳の世界もピンキリですが、近年最も有名な翻訳者といえば、松岡佑子さん。


ハリー・ポッターシリーズを翻訳した方です。彼女の印税は数十億と聞いたことがあります。全く羨ましい限りですが、現代だからこそ成し得たことのような気がします。個人的には彼女は単なる翻訳者というより企業家としてのセンスや先見の明があったのではないかと思います。そんな彼女もスイスでの豪邸住まいを優雅に楽しんでいるのかと思いきや、ご主人を亡くされたり、ハリー・ポッターの「不死鳥の騎士団」を翻訳している最中に父親を亡くされたりといろいろと苦労されているようです。しかし、それらの経験が翻訳にも生かされているとご本人のコメントを読んだことがあります。


最近、翻訳について興味のある記事を読みました。2008年11月1日の日本経済新聞に掲載された「源氏物語千年紀」についてです。「源氏物語千年紀」というタイトルだけでもロマンを感じます。源氏物語が誕生して1000年を迎え各地で様々な行事が行われているほか、世界の源氏研究者が様々な成果を発表しています。先日、文化勲章を受章したコロンビア大学のドナルド・キーン教授もその一人です。記事によると、源氏は英国、フランス、ロシア、韓国、スウェーデンなど二十以上の国や地域の言語に翻訳されており、現在もモンゴル語、ウクライナ語、エスペラント語が進行中とのこと。

 

2008年11月1日の日経新聞記事

日経記事(源氏物語)_081101.jpg

 

源氏物語ともなると、原文を読み解くにもかなり専門的な知識がいるので、古典語を現代語に翻訳する「現代語訳」という作業が必要になります。現代語になった源氏物語でも、更に外国語に翻訳するとなれば、歴史、美術史も含めかなり広範囲の研究をしなければ、美しいこの日本独自の物語を外国語に翻訳するのは難しいことが容易に想像することができます。しかし、一方で難しいからこそやりがいがあり、日本独自の言語とそれにマッチした言語表現を生み出す喜びもあるに違いありません。様々な研究者によって翻訳されているので、もちろんその翻訳者が二次的著作物として権利を持つのでしょうが、これだけの大作は国家レベルのプロジェクトとして支えていくことも必要でしょう。


少し話はそれますが、源氏物語はこれだけ有名なのにもかかわらず、本格的なドラマや映画が少ない印象があります。また、美しい源氏を演じるため、映画やドラマの多くが女優に源氏役をさせています。紫式部役の吉永小百合と源氏役の天海祐希の「源氏物語・千年の恋」という映画がありましたが、ここでも源氏役が女優でした。美しい源氏というイメージから女性を起用したくなる気持ちもわかりますが、個人的にはやはり源氏は日本男児に演じてほしいと思ってしまいます。物語の中心は男女の愛憎劇なので、 NHKの大河ドラマなどでは扱いにくいかもしれませんが、これだけ世界で愛される古典文学であり、また多くの国で翻訳されているのなら、本格的な長編ドラマを作って世界に日本の文化をより強くアピールするべきだと感じます。これからは日本が何かと注目される時代が再びやってくる予感がするのは私だけでしょうか。。。

 

 

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このページは、Ted Matsuuraが2008年11月 4日 13:55に書いたブログ記事です。

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