国際契約において、契約の両当事者が完全に同等の立場に立つことはほとんどなく、一方の当事者が優位に立つのが常と言えます。ですから、当事者の力関係を考慮せず、安易に標準条項をはめ込んで契約案を作成しても、国際ビジネスの実態から見ると非常に非現実的な取引案となる恐れがあります。
契約書案は先ず優位に立つ側が作成し、相手側に提示するのが普通です。
その第一条を見れば、当事者間の力関係がわかりますし、優位に立つ当事者がどの程度その権利を膨らませて主張したいのかも明らかになります。その程度は、契約書によって様々であり、中には驚くほどあらゆる点で優位当事者に有利なように作成されているものもあります。
そうした当事者間における力関係の要因となるのは、例えば、資本力、経営状態、市場占有率、販売力(優れた販売・アフターサービスのネットワークなど)、有名商標、優れた技術や特許などです。
以上は契約案作成時の話ですが、契約の有効期間中に、一方の当事者の経営状態の変化などが生じた場合、当事者間の力関係が変化することもあり得ます。
契約案の作成者は、従業員であると法律家であるとを問わず、自社あるいはクライアント(依頼主)に対する思い入れがあり、それが契約文言に影響を与えます。
そもそも取引契約が自己の事業の利益追求を目的としている以上、契約は当事者間の利害関係の激しいぶつかり合いとその妥協の産物と言えます。なかには、他方当事者の海外進出を妨害するために、骨抜きの契約を締結することすらあるようです。
契約における両当事者の利害関係を言い出すときりがないですが、契約書の文言にはそういった様々な思惑が反映されているわけです。従って、翻訳する側としては単に字面を追うだけの作業に終始するのではなく、契約における両当事者の立場をおさえた上で訳出しすることが求められるのです。

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